メルマガ厳選コラム2010
[厳選コラム2010ー1]
「先生は、どうしてそんなに詳しいんですか?」
あるデリヘル開業手続きの依頼者、相談時、少々驚かれたようです。実際、相談においては、単に警察への届出に関することだけではなく、他にも様々な質問を受けます。例えば、税金や源泉徴収などについてもそのひとつ。そして、相談者の多くが「他の開業者はどのようにしているんですか?」と尋ねてきます。
僕の場合、実績、職歴が伴って、業界に精通していると自負しています。実際の開業者の話は、実績を重ねなければ知ることができません。また、行政書士開業以前も、風営法に関する業界に携わっていたことが、現在の仕事に大きく寄与しています。今では風営法に関して週刊誌からコメントを求められることもあります。
一方、この業界に精通した行政書士なんて、けっして品がいいものではないことも自負しています。実際、クラブなどの風俗営業の許可は引き受けても、デリヘルについては断っているという同業者もいます。僕自身も、正直言うと、開業当初はこの業務を避けていました。ですが、結局戻ってきてしまったのは、格好良く言えば、表と裏のボーダーライン上で両方の世界を垣間見てきたスタンスによるものかもしれません。
デリヘルについてはお断りという行政書士が思い描いている依頼者の実像と、僕のところに依頼に来られる方の実像では、実は大きな隔たりがあります。そこには、僕にとっては無視できない状況があるがゆえ、掲示板で「最低の行政書士」と罵られながらも、この業務を続けている所以です。
いずれにせよ、みなさんとは「縁」があるか否か。最近では、東京からの相談者も増えています。2010年初春、それでも僕らはみんな、生きているーー。
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[厳選コラム2010ー2]
先日、クラブホステスの所得税源泉徴収について争われた裁判で、最高裁は「実際の出勤日数分しか控除できない」とした国税当局勝訴の1、2審判決を破棄し、報酬計算期間の全日数分を控除できるという判断を下しました(訴訟については改めて税額を計算させるため東京高裁へ審理の差し戻し)。
現在、税法では個人事業者に相当するホステスは、経営者が源泉徴収する際、1日あたり5千円を控除できることになっています。この1日あたりというのは、あくまでも実際に出勤した日のみ必要経費が発生するという考えの元、出勤日のみが相当するとされていましたが、今後は出勤しなかった日も含め、報酬計算期間の全日数を含めて控除するという計算になります。
源泉徴収については、質問を受けることが多い事項のひとつです。「計算方法がわからない」といった経営者からの問合せがある一方、働く女性から問合せを受けることもあります。
「源泉徴収されていないが、大丈夫か」
「計算方法が不明瞭」
などなど。店と働く女性がトラブルを生じさせる原因の最たるものが「報酬」に関するものです。これはクラブなど社交飲食店に限らず、デリヘルについても同様。源泉徴収については、今回の判例を参考にして頂ければと思います。
※デリヘルにおける源泉徴収税については、当事務所まで直接お問い合わせ下さい。
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[厳選コラム2010ー3]
先日、相談を受けたのは、映像送信型性風俗特殊営業についてでした。手続きや関連する法令について、無店舗型性風俗特殊営業と似ているイメージがありますが、実際には規制において大きく異なってきます。例えば広告宣伝。風営法のみならず、各都道府県の条例によっても上乗せ規制されているので注意が必要です。
また、誤った情報が流れているのも事実です。
・海外サーバー利用であれば「わいせつ」は問われない。
・1対1のチャットであれば「わいせつ」は問われない。
これらはいずれも、必ずしも「問われない」とは限りません。あくまでも運営実態によって、判断されることになります。
ところで、ネットコンテンツ事業者の方の中には、単一的な中身ではなく、先の映像送信型性風俗特殊営業を含め、SNSなどを絡めた複合的なコンテンツを運営されている、あるいは今後、運営を予定されている方も多いかと思います。
一点、ご注意を促したいのが、違法情報に関し、削除依頼があったにもかかわらず削除を行わないサイト管理者に対しては、今後警察庁において積極的にほう助罪などを適用させていく方針であることです。併せて言うまでもなく、強いコンプライアンスが求められています。
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[厳選コラム2010ー4]
「先生、デリヘル、店閉めようと思うんです。廃業届、作成してもらっていいですか」
その日、かって関西エリアで開業のサポートをした依頼者から電話がかかってきた。デリヘルを開業させたのは昨年の春。わずか1年ほどでの撤退だ。
てっきり、上手くいっているとばかり思っていた。けど、実際は厳しかったのだろうか。景気悪化に伴い、デリ業界でもデフレは進んでいる。女性は集まりやすくても、客は集まりにくい現実。
だが、久しぶりの電話、けっして暗い声ではない。むしろ、その反対。事務所の契約解除など撤退準備も終え、すっきりした気分だったのだろうか。いや、そういうわけでもなかった。
「これからどうしますの?」
「まぁ、なんとかなるでしょう。ちょっと女の子のお世話になります」
そう、女性と一緒に暮らしているという。デリ撤退は確かに経営的不振が伴ってのもののようだが、雇っていた女性(元人妻)とそれなりの関係になったようだ。
こんな結末があってもいいだろう。僕自身、たいしたサポートができなかったと悔いる気持ちもあったが、多少は救われた気分。
「いずれまた始めますし、そのときはまた手続き、よろしくお願いします。広告代理店との上手な付き合い方もわかったし、今度は大丈夫でしょう」
彼はそう言って電話を切った。デリヘルの開業に関わり、いつも思うのは、「それでも僕らはみんな、生きている」。理解されなきゃそれはそれで、仕方がない。
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[厳選コラム2010ー5]
よく質問を受ける内容のひとつとして、客引き行為が挙げられます。客引きについは、各都道府県にて条例で規定されているところが多く、例えば関西では、以下の通りです。
京都府:迷惑行為防止条例
大阪府:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
兵庫県:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
愛知県:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
これらの条例では、利用客の誘引のみならず、例えば「役務に従事するよう勧誘すること」として、スカウトについても禁止の規制が盛り込まれています。
さらに、客待ち行為についても、「大阪府:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例施行規則」「兵庫県:客引き等の相手方となるべき者を待つてはならない地域の指定に関する規則」などのように、条例施行規則として一部地域での客待ち禁止が定められているところがあります。
また、東京都では、「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」(ぼったくり防止条例)において、路上でつきまとうなどして勧誘した女性の雇用を直接禁止しています。
開業にあたって、法令の話しをすると、「けっこうがんじがらめなんですね」と言われることがあります。もちろん、「知らなかった」では済まされないのが法令、コンプライアンスが求められているのは言うまでもありません。